
いままでにない組織を作る。TOKINOHA清水さんインタビュー
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-------清水さんは仕事のどこで喜びを感じられますか?
「器が出来上がって自分の中でいいと思っても、仕事全体で見ればまだいい仕事をしたとは言えない状態です。
作った器が料理人さんの手に届いて、その器でお客さんが感動している瞬間を目の当たりにできた時に初めていい仕事をしたと思えます。
器が料理やシチュエーションに調和して、感動が生まれることが一番の喜びですね。」
------使うシーンを常に意識しておられるのが、TOKINOHAのモノづくりの秘訣なのですね。
-------反面、仕事の難しさを感じる時はいつでしょうか?
「陶芸はコツコツ積み上げる仕事です。
土を揉んで、轆轤を引いて、土を削って、釉薬をかけて、最後の最後は窯というブラックボックスにいれるんですが、結局は祈るしかありません。
実は、窯出しをしてみたら全滅していたなんてこともあります。それも決して珍しいことではありませんよ。
一か月コツコツ積み上げたものがパーになってしまうんです。これが当たり前。
やはり火に任せるという工程があるのがこの仕事の難しさではないでしょうか。
一番重要な焼く工程で自分の手から離れてしまう。
窯から出たときにはもうどうしようもない。結果を受け入れるしかないんです。
どこかで精一杯やってダメなら仕方がないという気持ちも持っています。すべて自分の責任だと思うと精神が持たないんですよ(笑)。
難しい部分ではありますが、そこに面白さがあるとも思います。」
------私たちの仕事でもデータが飛んでしまったという経験はありますが、陶芸ではそのスケールが違うわけですね。
-------今回制作を依頼しました抹茶碗ですが、当初は失敗から生まれたそうで。
「そうなんです。制作段階で縁が欠けてしまったモノがあったので、あえて欠けている部分を大きくしてみたんです。
そうしたら他には見ない面白いものができました。うちにはそういうモノがたくさんあります。
過去に作ったサンプルを展示していると、いろんな人たちがこんなモノができないかとアイデアをくれるんです。
器を通して対話ができるといいますか。今回は欠けた茶碗を作ってほしいというとんでもない依頼が来たわけで(笑)。」
-------私共の無茶にお応えいただいてありがとうございます(笑)。さて、清水さんとTOKINOHAの今後の挑戦についておうかがいしてもよろしいですか?
「僕が見ている陶芸の世界は、アーティストの世界ではなく職人としての世界です。
正直な話、窯元で働くというのは厳しいものがあります。決して環境はよくないと思いますね。
多くの方は職人として経験を積んで、作家として独立されます。要は、職人になるか作家になるかの二択しかないんです。これって健全じゃないですよね。
僕は職人という立場にありながら、いい生活もクリエイションもできる。
そういう組織を作っていきたいと思っています。おそらく今までにはないと思います。
決して個人作家がダメという話ではありません。
ただ、今の業界は花火を見ているような印象なんです。綺麗だけど続いてく感じがしないと言いますか。
僕は組織として続いていく形もあっていいと思っています。
職人として技術を磨けば、生活もできるしクリエイションもできる。そういう組織を作ることがこれからの僕の挑戦です。」
-------最後にこれから陶芸を志す方にメッセージをいただけますでしょうか?
「今はモノを売る場所がどんどん広がっている時代だと思います。
なので、売る人が力をつけている時代とも言えます。
売る人の数は増えましたが、生み出す人の数は増えていないと思っています。
陶芸の世界は、ちゃんと技術を身に着けて地道に頑張れば絶対に食べられる世界だと思います。
一足飛びで売れたい人が多いし、その気持ちも分かるには分かるんですが、やはりできないことなんです。
基礎から一歩ずつ学んで習得することが重要だと思います。
陶芸の仕事って一生できる仕事だから、焦らず地道に頑張ってほしいです。」
Writer 中窪晃佑