【京友禅:安藤染工インタビュー前編】華やかさこそ、私たちの誇り
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──まずは、安藤染工様の染色技術について教えてください。
うちは「型友禅」と呼ばれる技法で染めています。
型紙を使って染める方法で、その中でも「板場友禅」というやり方です。
反物の幅に合わせた板の上で、生地を貼って、エアブラシなどで色を吹き付けていくんです。
昭和の初期から発展した技法で、当時は京都のほとんどの染屋がやっていましたね。
インクジェットの登場などで今ではこの方法を続けているところは少なくなりました。
※エアブラシでの染色作業
──型友禅というと、繊細で緻密な作業という印象があります。
そうですね。型紙が少しでもずれると商品にならないんです。
わずか0.5ミリのズレでも、柄が合わなくなる。だから常に緊張感がありますね。
でも、ズレなく染め上げる繊細な技術があるからこそ、出来上がった着物は美しいものになります。

※保管されている型紙たち
──安藤染工さんならではの強みは、どんなところにありますか。
うちは振袖を長く手がけてきたので、華やかな染織が得意です。
とにかく「華やかさ」には自信があります。
振袖って、やっぱり人生の晴れの日のものですから。
華やかさの中に上品さをどう表現するかをいつも考えています。
──華やかさにこだわる理由は?
やっぱり見た人が「きれいだな」と感じてくれることが大事だからです。
賞をいただくこともあるのですが、賞を取ろうと思ったら、万人受けするデザインを作るほうが楽なんですけど、実はそれでは勝てないのです。
インパクトというか、“癖”が必要なんです。
うちの個性をちゃんと表現することが重要です。

──これまでに受賞された賞も多いと伺いました。印象的な受賞経験はありますか?
そうですね。
一番うれしかったのは、例年ならば手描き友禅の作品が受賞している賞を、型友禅の技術でとれたことです。
その賞は振袖で受賞したのですが、実は留袖や訪問着は比較的評価を受けやすいのです。
ですから、型友禅かつ振袖での受賞は本当に珍しかったわけです。
我々の技術はもちろん、型友禅の可能性を認めてもらえたようで本当に感慨深かったです。

※実際の賞状
──長くやってこられても、技術を磨き続けているのですね。
ええ。極端な言い方ですが何もしなければ仕事はなくなりますから。
毎年成人式に足を運んだりしながら常に流行を意識しています。
「今どんな色や柄が求められているか」そんな社会の機微に敏感に気づかないといけません。
伝統工芸って“変わらない”と思われがちですが、実は“変わり続けなきゃ”いけない世界だと私は思っています。
後編は明日公開されます。