
伝統と革新 職人を再定義するTOKINOHA
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京都の東、山科というエリアには清水焼団地と呼ばれる場所があります。
その名の通り、多くの窯元や陶芸家、それに関連する業者が集まるまさに陶器の街です。
歴史ある街に新たな風を呼び込む職人たちがいます。
その名はTOKINOHA。シンプルかつモダンなデザインで多くの人の心を掴んできました。
私たちは清水焼団地内にあるショップと工房が一体となった体験型店舗に伺いました。
光が多く取り入れられた店舗の中には多くの器がディスプレイされており、燦燦と光を浴びながら、どの器も煌めいていました。
まるで宝箱の中に入ったようです。美しい器たちに私は一瞬で魅了されました。
TOKINOHAの器の魅力はどこにあるのか。
私なりの解釈は「想像する余地がある」ことが大きな魅力だと思います。
何を盛りつけようか、どんなシーンで使おうか、そういった空想を受け止める余地があるから、これだけ多くの方に受け入れられているのだと感じます。
つまるところ、器が優しいのではないかと思います。主張がないわけではない。
かといって盛られているモノに負けることもない。
食材と完全に調和する優しい器を作るためにどれほどの努力があったのか、器を通してそんな歴史まで伝わってくるようです。
インタビューを通して、代表の清水さんから今後の職人像についてのお話がありました。
生活の安定を図りながら、職人が持つ個性を活かしつつ創作もできる環境を整えたい。これが清水さんの理想だそうです。
職人というものは依頼を受けたモノを作るのがメインの仕事です。自分の創作というものはどうしても二の次になってしまう。決して悪い形ではありません。
しかし、創造の余地があっても良いのではないか。清水さんは「職人」という言葉を再定義し、このバランスを取ろうと闘っておられるのです。
清水さんのお話の中で、私は「伝統と革新」という言葉を思い出していました。
歴史ある土地で伝統と向き合いながら、職人たちのこれからを模索する。守るべきものは守り、変えるべきものは変える。
当たり前ではありますがこの境界線の見極めが一番難しいのではないかと思います。
時代や環境は常に変化しています。
その中で核となる重要な部分は残しながら、時代の変化に対応し新たな価値を創出することは、どの分野においても共通の課題ではないかと思います。
私たちも時の潮流の中で波を読み風を読み、核となるモノをそのままの熱量で皆さんに届けなければならないと思う今日この頃です。
Writer 中窪晃佑
Collection of TOKINOHA