
美しいものを生み出すために。TOKINOHA清水さんインタビュー
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------まず最初に清水さんが陶芸家を目指された経緯をお聞かせください。
「父が陶芸をしていたんですが、幼い時僕は全く興味がありませんでした。
大学で建築を学んだことをきっかけにものづくりというものの面白さを知りまして、
陶芸も面白いんじゃないかと思うようになりました。
大学を卒業して陶芸の専門学校に通い陶芸家としての道のりを歩み始めました。」
------幼い時は興味が無かったというのは大変意外でした。長年のモノづくりの中でこだわられている点はありますか?
「僕は轆轤の技術にこだわりがあります。
特にシェイプにこだわっていて、その中でも口元(器の縁の部分)へのこだわりが強いです。
口元を成形することを口づくりと言うんですが、僕は用途に応じて10種類くらい作り分けています。
酒器を例に挙げても、冷酒なら薄くした方が美味しく感じるし、熱燗なら少し分厚く丸くしないと飲みにくいですよね。
たとえ口をつけないお皿でも適切な口元があると思っています。
使うシチュエーションや目的を考え、こういう口元が一番合うと思いますと提案しながらモノづくりをしています。
陶芸をやり出してからこの点にはずっとこだわっています。」
------10種類もですか!たとえ一目で分からなくともそういった細やかなこだわりがTOKINOHAさんの商品を魅力的にしているのでしょうね。
-------清水さんの考える理想の器はどんなものですか?
「時代を超えて愛される器がいいです。
一見シンプルで器自体に個性はなくても、料理が盛られればすごく美しくなる。
使われることで完成する器が理想形ですね。」
------盛ったものを美しくする。器としては当たり前のことかもしれませんが、一番難しいことかもしれませんね。
-------理想の器を作るために土にもこだわっておられるそうですが。
「若い時は土自体にすごく興味がありました。自ら土を掘りに行ったこともあるくらいです。
今は経験則からこういう表現をするなら土はこれがいいというのが分かるようになりました。
仕上がりから逆算して土を決めている感じです。産地というより土それぞれの得意な表現に注目して土選びをしています。」
-------土へのこだわりと同様に工房にもこだわりがございますか?
「色々こだわりはありますが、一番はきれいにすることです。
きれいというのは、整理整頓されていて常に美しい状態です。
美しい場所からしか美しいものは生まれない。僕はそう思っています。
僕たちはいろんな粘土を使っていますが、粘土にも相性があって混ぜてはいけない粘土もあります。
少し混ざっただけで仕上がりに大きな影響が出てしまうこともあるのです。ですから、常にきれいな状態を維持しておかないと安心して制作できません。
意外かもしれませんが、日々の掃除が僕たちの表現の幅を広げてくれているんです。」
------美しい場所からしか美しいものは生まれない。TOKINOHAさんの商品がどれも美しい理由が分かった気がします。
-------数多くの商品を手がけておられますが、創作のひらめきはどこから来るのでしょうか?
「感覚的な話なのですが、サイズ感や用途を訊けばなんとなく最適解が分かるんです。
おそらく今までの蓄積・経験則から分かるようになったと思います。
若いうちは分からなかったんですが、数をこなすうちにだんだん分かるようになってきました。
たくさん表現する中で最適解を見つけたような気がしています。」
-------今更ですが、TOKINOHAと名前の由来をうかがってもよろしいですか?
「うちは奥さんも作家なんです。で、結婚して初めて構えた工房が京都の北の方でした。
工房の住所には「紫」と「桃」の漢字が入っていて、そこから連想されたのがトキという鳥の羽の色です。
トキの羽の内側の色は紫がかったピンク色で、これをトキ色とかトキノハ色と呼ぶそうで、自分たちの名前にふさわしいと思ったんです。
今は工房は別の場所に変えていますがこの名前を気に入っていて今でも使っています。」
------なるほど、素敵なお名前だと思っておりましたが、そういう経緯があったのですね。
後半は明日公開されます。
Writer 中窪晃佑