【陶芸家・山本直毅】自然の中に身を置き、自然の風景を器に映す。自分と向き合い辿り着いた、愛される器作り
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–陶芸を始めたきっかけを教えてください。
もともと母親が趣味で陶芸をやっていたので、陶芸というもの自体は身近にありました。ただ母も仕事としてではなく趣味の範囲でやっていましたし、僕自身も10年ほどは別の仕事をしていました。
そんな中で、「何か本気でできる仕事はないかな」と考えていた時に、陶芸教室に通い始めたんです。最初に通ったのはカルチャーセンターのような場所で、30歳くらいの男性なんてほとんどいなくて、おばさま方の中に混ざりながらやっていました。
それが一番最初のきっかけですね。

–そこから陶芸を仕事にしようと思ったのはいつ頃ですか?
カルチャーセンターに通った後、個人の先生がやっている教室にも通い始めました。しばらく続けているうちに、「これ、仕事にできるんじゃないかな」と思うようになったんです。
それで翌年から陶芸の訓練校に通うことにしました。アルバイトをしながら就職活動もしつつ、週5日くらいのペースで通っていましたね。それくらい陶芸にハマってしまったんです。
その後しばらくして地元に戻り、この工房で陶芸を始めました。

–作家として活動を始めた頃は、どのように作品を発表していたのでしょうか?
最初はフリーマーケットやクラフトフェアに応募して、審査に通れば出店できるという形でした。いわゆる手作り市からのスタートですね。
最初の2〜3年はそういう形で活動していました。自分で作品を持って行って、直接お客さんに見てもらうという感じです。
そうしているうちに、3年目くらいから少しずつお店や百貨店の催事などに声をかけてもらえるようになりました。呼んでもらって出店する、という機会が増えていった感じですね。

– 陶芸を仕事にする中で、辛いと感じることはありましたか?
ありがたいことに、「辛い」と感じたことはほとんどないんです。
もちろん始めたばかりの頃は収入の面などで多少の不安はあったと思います。でも「これでやっていく」と決めていたので、精神的に辛いと感じることはなかったですね。
強いて言うなら、体が痛いとか筋肉痛とか、それくらいです(笑)。
やめるという選択肢がなかったんですよ。それくらい夢中になっていました。

Q5. 作品づくりの考え方は、最初の頃から変わりましたか?
最初の頃は、自分の好きなものや好きな色を追いかけていました。
外国の骨董品を見たり、雑貨店でいいと思ったものを買ったりして、それを作品に落とし込むような感じでした。
また当時は、自分で作品を売りに行っていたので、お客さんの反応もよく見ていました。自分では良いと思っていても、全然手に取ってもらえないこともある。
なのでこの頃から、自分の好きなものだけを作るというより、お客さんの反応を見ながら作ることが増えましたね。
やっぱり、お客さんに喜んでもらえることが、僕にとっての1番の喜びなので。

–最近の作品づくりでは、どんなことを意識していますか?
最近は、影響を受けるものが少し変わってきました。作家さんの作品や美術館などからというよりは、自然の風景や空気感からインスピレーションをもらっています。
木や森、空の色だったり、そういう自然の景色を作品に映し込めないかなと考えるようになりました。より自然に近づくような感覚です。
始めた頃は技術もまだ伴っていなかったので、こんな作品が作りたいなと思った作品があって、それを真似しようとしても真似できなかったんです。でも今は、ある程度近いものを作れてしまう。
だからこそ今は、自然と自分をリンクさせるような感覚で制作しています。

–今の作風について教えてください。
最初は「粉引(こひき)」というスタンダードな白い器を作っていました。赤い土に白い泥をかけて、その上に透明の釉薬をかけるスタイルです。
僕自身もこの雰囲気が好きで、陶芸教室や学校に通っていた頃からよく作っていました。
ただ、そこにあえて色のある釉薬をかけるというスタイルはあまり見たことがなかったので、試してみたかったんです。
そこで、キレイな青色を出したいと思って、一度白い泥を使わずに青い釉薬を試したこともありましたが、やっぱり白い泥がある方が美しく仕上がりました。
それ以来、10年以上このスタイルを続けています。他の人とは少し違うものづくりをしたいという気持ちは、昔から強いかもしれません。

–これから陶芸を志す若い人へ伝えることがあるなら、どんなことですか?
面白いと感じた初心や、最初に楽しいと思った感覚を大事にしてほしいなと思います。
もちろん僕自身も、普段はそんなことを忘れて日々過ごしているんです。でも振り返ると、やっぱり最初のあの感覚はとても印象深いものなんですよね。
それと、以前に有名な陶芸家の方から「内側から作りなさい」と言われたことがあって、最初は意味が分からなかったんです。でも続けていくうちに少しずつ理解できるようになりました。
つまり、自分を掘るということですね。「本当は何が好きなのか」「自分は何をしたいのか」。そういうことを問い続けることが大事なんだと思います。
美味しい料理屋さんに行くとか、美術館に行くとか、そういう体験も全部つながっていきます。

–山本さん自身は、今後どんなビジョンをお持ちですか?
僕自身は、これからより自然の中に身を置きながら暮らしていきたいと思っています。食べて、寝て、畑を耕して、仕事をする。そんなふうに生活と仕事が自然につながっている形が理想ですね。
陶芸は何千年も前から続いてきたものです。その長い流れの中に、自分も少なからず関われている。そういう自然の流れに身を置きながら、自分らしいモノづくりを続けていきたいなと思っています。
