【陶芸家:馬川祐輔】 人とは何かを分かりたい
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今回は陶芸家馬川祐輔さんの工房にお邪魔してお話を伺いました。
馬川さんが工房を構えられているのは、兵庫県の中部に位置する丹波篠山市。
農業と観光業が盛んなこの地域で、作陶を続ける馬川さんの作品は、カラフルでポップな印象がありながらも、どこかに“メッセージ”が内包されています。
明るさの中に、深く人間を見つめる視線が潜んでいるのです。

馬川さんと初めて出会ったのは、大阪で開催されたグループ展の会場でした。
その後、コーヒーを飲みながらゆっくりとお話を伺う機会をいただきました。
第一印象は、穏やかで少しシャイな方。
こちらの話に熱心に耳を傾け、静かにうなずきながら言葉を選んで話される姿が印象的でした。
作品の話になり熱心にご説明くださったのをよく覚えています。
ここで馬川さんの情熱が垣間見えました。
「この作品はこんなテーマで作りました。」
「この作品のここが気に入っています。」
こんなお話をたくさん伺い、“作ること”が心から好きなのだと強く感じました。

ご説明をいただいた作品の中で、コップを例に馬川さんの哲学をご紹介しましょう。
コップの全体を覆うように人が描かれています。
それぞれに表情があるわけですが、よく見るとどの顔も違う表情をしています。
笑っている人、怒っている人、悲しそうな人、そして何も考えていないような人――。
その多様な表情が並ぶ様子は、まるで人間社会そのものの縮図のようです。

馬川さんの最近の制作テーマは「人とは何か?」ということだそうです。
人とのコミュニケーションの中でこの人は何を考えているのか、疑問に思うことが間々あると語られていました。
言葉や表情に注意を払っていても、相手の感情をすべて理解することはできない。
そうした“人間の複雑さ”に魅せられ、陶芸という手段でその問いを掘り下げているのです。
「自分が考える”人というもの”を表現し続ければ、この問いへの答えが分かると思うのです。」
そう語られる馬川さんの表情は、真剣そのものでした。

自らの内側を見つめ、その声を聴きながら形にしていく。
そして、それを社会に投げかける。
それが、馬川さんにとっての表現なのでしょう。
「作ることがないと、生きていけないと思うのです。」
インタビューの終盤でこう語られたのが印象的でした。
土と向き合い、人と向き合い、そして自分と向き合う。
その姿勢が、彼の作品に力を宿しているように感じました。