【京友禅:藤田染苑インタビュー後編】すべてはお客様に喜んで欲しいから
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------お客様に喜んでもらうことが一番とおっしゃっておられましたが、他にも仕事で喜びを感じる時はございますか。あるいは苦しい時など。
「イメージ通りに商品が出来上がった。
あるいはそれ以上のものができた時はやはりうれしいですね。
いい商品ができればお客さんにも喜んでいただけますから。
苦しい時は失敗したときですね。
失敗の原因を究明し対処しなければいけないわけですが、時には原因にたどり着けない時もあります。
こういう時は苦しいですね。
根気強く原因を究明して、逆境を脱したらそれもまた嬉しさに変わるわけですが。」

------少し話は変わりまして、昨今後継者不足が問題となっている染色業界について藤田さんは何かお考えがございますか。
「不思議なのですが、この業界は自分の子供や親族に継がせることが多いんです。
昨今の染織業界は縮小気味ですし、将来性などの点においても問題は多いと思います。
もちろんこの業界に限った話ではないと思いますが。
私自身はできる範囲の仕事はしっかりとこなすことを大事にしています。
50年100年先を考えるのは正直おこがましいと思っているんです。
会社としても業界としても生き残っていくためには今と向き合うことが重要だと思っています。
今の先に未来があるわけですから。
今の仕事と真剣に向き合うことが、先人たちが残したものを後世に伝えることに繋がる。
今を真剣に生きることが我々の一つの義務だと思っています。」

------確かに今を飛び越えて未来を語ることはできませんね。今としっかり向き合うことで100年200年先に友禅が残っていくのかもしれませんね。藤田染苑様のこれからの挑戦などはございますでしょうか。
「私たちのすべきことは本質的には変わらないと思います。
お客さんに喜んでいただく、そんなモノづくりを続けていきたいですね。
商品でお客さんの信用を勝ち取って、その信用を損なわないようにしたいです。
あそこに任せれば間違いないと思われる仕事を続けることがこれからの挑戦かもしれません。」

------お客さんから難しいリクエストが来ることもありますか。その時の心境や向き合い方についてうかがっても。
「難しいリクエスト。確かにありますね(笑)。
困ったなという気持ちにはなりません。むしろお題を与えられた感覚です。
よっしゃ来た!という思いさえありますよ(笑)。
どんな仕事でも簡単な仕事というのは無いわけです。
ですから、どんな仕事に対しても同じような心持ちで挑んでいます。
与えられたお題に弊社として出せる最高の答えを出す。
そのための筋道を考えるのもまた仕事の一つの楽しみだと思います。」

------常に全力で仕事に向き合っておられる。その姿勢がお客様の心を打つ商品を生み出しているわけですね。最後に藤田さんにとって友禅とは何でしょうか。
「生きがい。
その一言ですね。人生の中で働いている時間が一番長くなって来ました。
長く続けようという気持ちで続けたわけではなく、気が付けばこれほどの時間が経っていたという印象です。
今となっては当たり前にあるものですから、友禅やこの仕事なしには自分の人生を語ることはできないですね。」
