【京友禅:安藤染工インタビュー後編】伝統を残すのは、人の想い
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──職人さんの高齢化や後継者不足が進んでいると聞きます。
そうですね。
実際、弊社も一時期は職人が一人しかいなくなった時期がありました。
どうしようかと頭を悩ましていた時期に、偶然廃業される知り合いから職人さんを紹介していただきました。
この時に”続けなければ”という思いになりました。
勝手が違うので職人さんにも苦労を掛けましたが、一緒に成長して、今では立派な職人に育ってくれました。

※エアブラシを使い反物を染め上げていく
──当たり前ではありますが、簡単に続けられる仕事ではないですよね。
ええ。最初はうまくいかないことばかりです。
作業は細かいですし、体力が必要な工程もあります。
でも、続けているうちに“分かる瞬間”があるんです。
そこを越えると、一気に楽しくなる。
やっていることは地味ですが、仕上がりは華やかで本当に美しい。
それに我々が主力としている振袖は、人生の晴れ舞台を彩るものです。

※型紙の一例
──工房を移されたのはいつ頃ですか。
今の場所に移ってから、もう30年ほどになります。
昔は同業者が多くいたエリアでしたが、だんだん数が減ってきています。
さみしさを感じることもありますが、同時に守っていかなければいけないという闘志もみなぎっています。

※工房の様子
──今後はどんなことに挑戦したいですか。
これまで振袖や祝着を中心にやってきましたが、もっと多くの人に友禅の魅力を知ってほしいと思っています。
御朱印帳やPCケースなど、新しい商品も開発しています。
友禅の美しさは、着物以外の形でも伝えられると信じています。
──海外でも注目されているとか。
工房見学を定期的に開催しているんですが、海外からの参加も多いです。
海外にもきっとニーズはあります。
やり方を工夫すれば、友禅はもっと世界で受け入れられると思います。

──改めて伺います。安藤さんにとって、友禅とは何でしょうか。
今から新しく再現することはできない、残さなければいけないものです。
長い年月をかけて磨かれてきた技術は、職人たちの努力の結晶です。
私は、それを絶対に途絶えさせてはいけないと思っています。
この仕事をしてきた職人さんたちが引退するときに「やっていて良かった」と思えるようにしたいです。

伝統を守るということは、変わらないことではなく、変わりながら生かし続けること。
安藤染工の作品には、職人の誇りと挑戦する心が宿っています。