【京友禅:藤田染苑】今を精一杯生きて、未来に繋げる
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友禅という言葉は一度くらい見聞きしたことがあるかと思います。
ですが、その詳細は意外と知られていないのではないでしょうか。
かく言う私も取材に伺うまで友禅がどういうモノなのかなんとなくしか知りませんでした。
今回は京都にございます藤田染苑様にお邪魔して、友禅とはどういうモノなのかお話を伺いました。

まず、友禅というものがどういうモノなのか端的に申しますと友禅というのは染織の技法です。
その特徴は非常に美しい模様が描けることにあります。
繊細かつ煌びやかな色彩はさながら日本画のようです。

友禅の種類を大別しますと「手描き友禅」と「型友禅」に分けられるそうです。
手描き友禅はその名の通り職人さんが手描きで生地を染め上げていく技法。型友禅は型紙を使って職人さんが染め上げていく技法です。
そして今回伺いました藤田染苑様は型友禅をされておられます。

型友禅は型があるので大量生産に向いているのですが、友禅の技術に則っているので沢山の工程を経るわけです。
多くの色糊を使い、型紙を使い分けながら染め上げていきます。
一つの着物を染めるのに100枚の型紙を使うのは当たり前だそうです。
その他にも色糊を作る作業、蒸して色を定着させる作業もあるとか。
色が滲んでしまったり、少しでもズレが生じれば商品にはなり得ない。
非常に繊細な作業の連続です。

それでも目の前で職人さん達は、途方もない工程を圧倒的な集中力でこなされていきます。それもすごいスピードです。
作業の合間に職人さんに「すごいスピードですね。」と話しかけましたら、「今日は撮りやすいようにゆっくりやってます(笑)」と返されました。
職人さんたちの技術、恐るべしです。

作業をされる工房もまた素敵な空間です。
木造の2階建てで作業台が向こうまで続いている景色は圧巻の一言です。
どこか懐かしく、それでいて神聖な空間です。
この工房には職人さんたちが紡いできた精神のようなものが宿っているように感じます。
長い歴史の中で培われてきたこの空気が商品一つ一つに宿っているので、藤田染苑さんの商品はどれも魅力的に見えるのだと思います。

代表である藤田さんとのお話の中で、特に印象的だったお言葉があります。
それは「今の延長に未来がある」という言葉です。
私たちは連綿と続く時の流れの中にいます。
ですから、当たり前のように未来があると思ってしまう。当たり前に明日のことを考える。
ですが、今を懸命に生きなければ未来はないわけです。
過去から学び、今を懸命に生き、その結果として伝統が未来に繋がっていく。
藤田さんの言葉からそんな当たり前に立ち返ることができました。

私は伝統というモノを考える時、どうにも過去や未来に囚われてしまいます。
今のことをどこかよそに置いてしまうのです。
先人たちは何を考えていたのか。未来にどう残そうか。こういう視点は確かに必要です。
しかしながら、今と真剣に向き合わなければ様々な努力も水泡に帰してしまうのではないでしょうか。
歌舞伎役者の二代目の中村吉右衛門さんが「常に磨かれていなければ伝統ではない」とおっしゃったのを不意に思い出しました。
伝統と向き合うこの仕事において、今と向き合うことを忘れてはならないと思う今日この頃です。