【西陣織:西陣まいづる】伝統を織る
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今回は西陣織のご紹介です。
今回お話を伺ったのは、西陣の地で明治40年から織物を作り続けている西陣まいづるさんです。
まずは西陣織についてのご説明をしましょう。
西陣織は、京都で作られた先染(すでに糸が染まっている状態)の織物の総称です。
その名の通り、京都市の中心からやや北西の西陣というエリアが一大産地のためこの名が付きました。
西陣織の一番の特徴は繊細かつ豪華絢爛な装飾にあると言えるでしょう。
金糸や銀糸を使って描かれる艶やかな紋様は、人々の心を掴んで放しません。

この西陣織の歴史は古く、起源は5世紀から6世紀まで遡るそうです。
大陸から養蚕や絹織の技術が京都に伝来し、京都の西部を中心に発展を遂げてきました。
平安時代に入り京都に都が移った際に当時の権力者の目に留まったことや、職人達の弛まぬ研鑽により西陣織は技術は大きく花開いていくことになります。

今回訪れました西陣まいづるさんは、手織り機と力織機(動力を用いて織り上げる機械)で織物の制作を行っておられます。
手織り機の工房は静かで繊細な印象でした。
職人さんが織り機と向き合いながら、織物の表情を繰り返し確認し、ここだというタイミングでガタンと機を織るのです。
静かな工房の中に響く織り機の音。
この音があと何度積み重なれば一つの作品に変化するのだろう。
織物の奥深さに触れたひと時です。

これに対して力織機の工房はダイナミックで力強い印象です。
ずらっと並んでいる力織機がガタンガタンと力強い音を鳴らしながら、目まぐるしいスピードで織物を織っていました。
職人さんが耳栓をされながら作業されている姿がとても印象的です。
素人の私たちでは機械のスピードに付いていけず、なにが起きているのやらという感じでした。
やはり職人さんの技術は素晴らしいものです。
機械を完全にコントロールし織物を織り上げている姿を見ていると思わずカッコいいという言葉が口から洩れました。

代表の舞鶴さんは、手織り機と力織機にはそれぞれ得意な分野があると仰っておられました。
力織機はある程度までをコンピュータで制御するので飛躍的に生産のスピードを上げることができるそうです。
反面、手織り機の方は時間こそかかるものの、他にはない独特の揺らぎを表現できるのが特徴だそうです。
舞鶴さんのお話の中で私が特に興味深かったのは、西陣という街の特徴です。
西陣という街は分業で成り立っているというお話でした。
図案屋(デザインを決める職業)があり、糸屋があり、織屋がある。
細分化するともっと多くのセクションに分かれるそうです。
それぞれが独立し、それでいて協調している。昔ながらの日本の産業の形が今でも残っているのだと感慨深い思いになりました。
西陣という街もまた人々が織り上げてきた一つの作品であるのではないかと感じた今日この頃です。
