【京友禅:藤田染苑インタビュー前編】制約の中から喜びを生み出す

【京友禅:藤田染苑インタビュー前編】制約の中から喜びを生み出す

------まず、友禅とはどういった技術かお聞かせください。

「友禅は布地を染める日本の伝統的な技術です。

大きく分けると職人が手作業で模様を描く手描き友禅と、型紙と色糊を使って染める型友禅があります。

弊社が行うのは型友禅です。

手描きに比べて大量生産に向いているのが特徴ですが、多くの型紙と色糊を使うのでやはりそれ相応の技術が必要になります。

物によっては100以上の型を使って染めていくわけです。」

------100を超える型を使われるとは途方もない作業ですね。型染めの作業の流れをうかがってもよろしいですか。

「専門的な用語が少し続きますがざっくりと説明しますね。

まず、白生地の段階から糸目糊置き(にじみを防止する糊でデザインの輪郭を描く作業)、地入れ(糊を生地に定着させる作業)、色付け(細かい部分を染織する作業)、地染め(大きな部分を染織する作業)、蒸し(蒸気で染料を定着させる作業)、水洗(余分な染料や糊を落とす作業)、仮絵羽(生地を着物の形にする作業)までです。

たくさんの工程があるでしょう。

要は、白い反物が着物の形になるまでを担当していると考えていただければと思います。」

------着物を彩る過程のほとんどを担っていると言っても過言ではなさそうですね。藤田染苑様には藍捺染(あいなせん)という技術があると伺ったのですが。

「藍染はエジプトのピラミッドの中から発見されるほど昔からある技術です。

一般的には漬け染めという桶などを藍の染料で満たしてそこを潜らせて染める技法がベーシックです。

弊社はこの藍染をどうにかして型友禅に応用できないか考えました。

藍で型染めをするというのはほとんどない技術です。

いまでこそ安定的に染めることができますが、はじめの1年は色さえ出ませんでした。

染色の業界には「藍は生きている」という言葉があるように、藍は非常に扱いが難しいのです。

いまでももっといろんな表現ができるのではないかと研究を続けています。」

------1年も試行錯誤されたのですね。どこからその熱意が湧くのでしょうか。

「実は、若い頃はさほど染色に興味はありませんでした。20代の頃はプラプラもしていましたね(笑)。

弊社に入社して熱心に仕事に取り組む父の背中を見ているうちに、染色の仕事への興味が湧いてきました。父の原動力はなんなのだろうと。

今は熱意というよりかは物を作ることが楽しいという気持ちです。

物を作ってお客さんが喜ぶのがとにかく楽しいんです。

元も子もない話ですが、お客さんに喜んでもらえるものでないと商売として成立しませんよね。

自社の製品でお客様を喜ばせる。これが私の責務だと思っています。」

------お客様に喜んでいただく。おっしゃるように、これはどんな商売でも言えることですね。今お話を伺っております工房は大変珍しいと思うのですが、こだわりなどございますか。

「ただただ古い工房ですよ(笑)。昔はこんな工房ばかりでした。

戦前からある木造の工房は今となっては珍しいですが。

いろいろと制約のある工房です。制約があるというのは決して悪いことではありません。

制約の中で何ができるのかを考えることが重要だと思っています。

弊社が持っている技術についても制約があるからこそ増えてきたという背景があるわけです。」

------多くの商品や技術をお持ちのようですが、こういった方に届けたいという思いはございますか。

「先ほども申し上げたようにお客様に喜んでいただくのが私たちの喜びだと考えています。

喜んでいただけるのであれば、性別、年齢、国籍を問う必要はないと思います。

お客様のニーズを敏感に感じ取り、商品に活かして新しい喜びを生み出す。

これができれば、ありとあらゆる人に弊社の商品が届くと思います。」

後半は明日公開されます。

ブログに戻る