【京友禅:安藤染工】友禅で描く未来図
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京都市の中心から少し西へ行くと、西院というエリアがあります。
現在は閑静な住宅街となっていますが、昭和の頃には多くの染織業者が立ち並ぶ、着物の一大産地でした。
今回はこの地域で長年にわたり、型友禅による振袖や祝着を製作されてきた安藤染工様にお話を伺いました。
ここで、友禅の歴史を少しご紹介しておきましょう。
友禅は江戸時代、京都で生まれた染色技法です。
精緻な模様と華やかな色彩が特徴で、この技術を確立したとされる扇絵師・宮崎友禅の名にちなんで「友禅染め」と呼ばれるようになりました。
長らくは手描きによる染織技法として発展してきましたが、明治期に入ると、型紙を用いて染色する「型友禅」の技法が確立され、多くの人々に親しまれる存在へと広がっていきます。
※作品の一例
安藤染工様は、この型友禅の技術を受け継ぎ、いわゆる「板場友禅」と呼ばれる形式で制作を行っておられます。
反物の幅に合わせた板の上で、エアブラシなどを用いながら染色を施すもので、わずかなズレも許されない繊細な作業です。
一瞬の集中力と確かな技が求められる、まさに職人の世界といえるでしょう。

代表の安藤充泰さんは、「いいものを作ろう」「友禅を未来に残そう」という情熱に満ちた方です。
振袖や祝着に限らず、友禅の魅力をより身近に感じてもらうための商品開発にも積極的に取り組まれています。
近年では御朱印帳やPCケースなど、日常に取り入れやすい新しい商品も手がけておられ、伝統工芸を現代の暮らしに寄り添う工夫が随所に感じられます。
また取材の中で、職人さんのお一人に伺った話がとてさんのお話がとても印象的でした。
「市場のニーズは常に気にしています。変化が少ない業界だと思われがちですが、やはり流行はあります。その変化の兆しに気づけるかが大事なんです。」
当たり前のようでいて、実は非常に本質的な言葉です。
こうした“時代の少し先を読む力”の積み重ねこそが、伝統を形づくっていくのだと感じました。
※染織に使う色糊
安藤さんは、「伝統は守るだけではなく、息づかせることも重要だ」と語ります。
職人の高齢化や後継者不足が進むなかで、技術をどう受け継ぎ、どう次の世代につなげていくか。
その問いに真正面から向き合っておられるのです。
「私たちがやってきたことが、次の世代に“やってみたい”と思ってもらえるような仕事でありたい」と語る姿には、情熱と優しさがにじんでいました。
※使用されている染料・型紙の一部
先人たちの歩んだ道に敬意を払いながら、新しい道を探る。
その姿勢こそが、未来へと文化をつないでいくことなのだと気づかされた一日でした。