【陶芸家:篠原 貴志 インタビュー後編】込める思い、伝わる思い

【陶芸家:篠原 貴志 インタビュー後編】込める思い、伝わる思い

-----仕事のどこで喜びを感じますか。-----

お客さんを感動させられた時が嬉しいです。

僕は自ら店頭に立って販売することが多いので、お客さんをとても近くに感じています。

販売している中で、おそらく陶器を買いに来てはいないお客さんの目の色が変わることがあります。

それはきっと自分の作品がお客さんを感動させることができたからだと思うのです。

僕自身がお客さんを感動させることはできなくても、僕の作品にはそれができると思っています。

-----反対につらい時はありますか-----

制作に対するジレンマのようなものは抱えています。

修業時代は自分の思い通りに作陶するということができませんでした。

今環境も整ったので、思い通りの作陶をと思っていますが、今度は体力がないのです(笑)

-----コントロールが難しい土や火と向き合うについては、楽しいと思われますか、難しいと思われますか。-----

難しいことだらけです。

20年やっていますが分からないことも多く、試行錯誤の連続です。

土や釉薬には限りがありますし、こういったものは些細な変化を敏感に感じ取ります。

なので、こんなものを作りたいや、以前のものを再現したいと思っても、うまくいかないことの方が多いです。

特に自分の作りたいものは安定している部分に留まっていては作れないのです。

少し攻めて不安定な部分を狙って制作しなければならない。

今でも窯出ししてみたら全滅していたということもあります。

-----うまく行かなかった器にもやはり思い入れがありますか。-----

ありますね。

一つの作品を生み出すためにはすごく労力がいるのです。

この労力というのは単に時間がかかるというだけではなくて、どの作品にも同じ熱量の思いを込めているという意味もあります。

たとえうまく焼きあがらなくても込めた思いは変わらないんですよ。

なので、イメージ通りにいかなくてもやはり大切な存在ですね。

きっと、ものづくりをしている人は皆さん同じような気持ちなのではないでしょうか。

-----篠原さんにとって作るとはどういう事なのでしょうか。-----

楽しみです。ただただ楽しいのです。

轆轤の上で死にたいというのは少し言い過ぎかもしれませんが、作れる限りはずっと作り続けたいと思っています。

-----今後の挑戦についてお聞かせください。-----

いままでは手ごろな価格で若い方をターゲットにしてきました。

これからは自分の個性を感じられるような作品を作りたいですね。

三島や粉引きといったものが好きなので、そういったものに自分の個性を宿していきたいです。

目下の目標は三島を自分の形で発展させることです。

-----最後に陶芸家を目指される方へのメッセージをお願いします。-----

陶芸の道は時間がかかるものだと思います。

それでも、続けることで少しずつですが必ず形になっていきます。

大事なのは諦めないことだと思います。

それと、制作の上で重要なのは満足しないことです。

良い作品ができて満足してしまうとそこで成長が止まってしまう。

もっとできるのではないかという気持ちを常に持てば、いつまでも成長できると思います。

 

-----作るということは楽しい。そんな気付きを私たちに与えてくれるインタビューでした。-----

Collection of Shinohei Kiln

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