【陶芸作家:イェンユウ インタビュー前編】ただ好きだったから
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——陶芸との出会いは、東京に住んでいた頃だったそうですね。
「そうですね。2020年頃でした。
コロナの時期に外出が制限されて、自分と向き合う時間が一気に増えたんです。
自分がしたいことは何だろう。そんなことを考える時間が多くなりました。
東京に住んでいた頃は、ライターの仕事をしていました。
趣味ベースのつもりで始めた陶芸ですが、なんだか楽しくて、どんどんのめり込んできて。
本格的な日本の陶芸をさらに学びたく、東京から多治見市に移住し、陶磁器研究所に通うこととなりました。
正直、今までたくさんの趣味を持ってきたけれど、陶芸がこれほど長く続いたことには、自分でも驚きました。」

——のめり込んでいった理由は、何だったと思いますか。
「正直、はっきり言葉にできる理由はないんです。
ただ、肌に合った、という感覚が一番近いかもしれません。
大学ではビジュアルデザインを学んでいたので、平面上の作品づくりの工程には慣れていました。
陶芸は、立体的な工程を含む点が好きです。
土練りから制作、完成までを一人できる。
そこがすごく新鮮だったのです。
手で触れて、ロクロを回転させて、いろいろな角度から眺めながら完成形を探していく。
そのプロセスそのものが、陶芸の大きな魅力だと思います。
それに、工芸でありながら芸術的な表現もできるところにも惹かれました。
今の時代の作家になると、考案、制作だけでなく展示のスケジュール管理、マーケティング面まで含めて考える必要がある。
その幅の広さも面白いと感じました。」

——イェンユウさんが考える、理想の器とはどのようなものですか。
「やはり“使うもの”なので、使うシーンを想像することはとても大切だと思っています。
どんな食卓で、どんな料理が盛られて、どんな手に持たれるのか。
制作しながら、今もずっとブラッシュアップを続けていますね。
色彩ももちろん重要ですが、それと同じくらい、形や実用性も大切です。
見た目が良くても、持ったときに重すぎたり、日常で使いづらかったりすると、自然と手に取られなくなってしまう。
長く使ってもらえる器でありたい、という気持ちは常にあります。」

——制作の際、最初から完成形は決めていますか。
「ほとんど決めていません。
轆轤を引きながら、少しずつイメージを膨らませていく感じです。
器をいろいろな角度から見て、その時の感覚を頼りに完成形を探しています。
スケッチなどで設計図を描くこともほとんどなくて、手から伝わる感触を信じて制作しています。
『対話』という言葉が一番近いかもしれません。
その瞬間の感覚って、後から再現しようとしてもできないことが多いんです。
だから、その時に感じたものを大切にしたいと思っています。」

——土についても教えてください。
「岐阜県・東美濃エリアで採取された土を使うことが多いですね。
2-3種類の土を手に入れて、自分でブレンドしています。
日本の土は本当に使いやすいと思います。
種類も豊富ですし、手に入りやすい。
作りたい表現に合わせて選択肢があるのは、とても恵まれた環境だと感じています。」
後編は明日公開されます。