【陶芸家:安藤由香インタビュー前編】土のキャンバスに描く
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—— 陶芸と出会ったきっかけを教えてください。
社会人をしていた頃、たまたま道端にあった陶芸教室に入ったのが最初です。
特別に陶芸に憧れがあったわけではなく、本当に思いつきでした。
手びねりで小さなマグカップを作りました。
「焼き物って、縮むんだな」と思ったのを今でもよく覚えています(笑)

—— その後、なぜ作り続けたいと思ったのでしょうか。
アメリカの大学を卒業して、そのまま向こうの会社で経理の仕事をしていました。
ただ、その仕事が自分の肌に合っている感じはなくて。
それでも、アメリカで就労ビザを取っていたので、続けるしかありませんでした。
あるとき、日本に一時帰国した際に、日本の食器が欲しくなって、友人に相談して丹波焼のお茶碗を買いました。
それを日常的に使うようになって、器の魅力に気づいたんです。
工業製品にはない、手作りのものだけが持つ存在感。
使い続けることで、少しずつ自分のものになっていく感覚。
それが、とてもいいなと思いました。

—— 陶芸家になる決断は、どのように?
サンタバーバラに向かう列車の中でした。
先ほどお話ししたように悩んでいた時期でもありましたし、
正直に言えば、ワインを飲んでいたので少し酔っていたのかもしれません(笑)
不意に陶芸家になると決心して、翌日には会社を辞めました。
勢いで決めたようなエピソードですが、自分の中ではすごく納得感があって、
振り返って見れば選ぶべくして選んだのだと思います。

—— 理想の器について教えてください。
人の愛着が宿る器、ですね。
以前、画家の山下清さんの展示を見に行ったことがあります。
放浪の中で身につけていた品々が展示されていて、
その中に、肌身離さず持ち歩いていた湯呑がありました。
ああいう器は、やはり素敵だと思います。
デンマークにいた頃も、
景品のようなマグカップを大切に使っているおじさんを見かけました。
その光景がすごく心に残りました。
使う人にとって、特別な存在になれる。
そういう器を作りたいと思っています。

—— ご自身の作風を一言で表すと?
シンプルなフォルムに、繊細な色彩です。
曲線が好きで、弥生土器などから形を研究することもあります。
形は、色をのせるためのキャンバス、という感覚がありますね。
色ありきのフォルム、ですね。
自分ではそこまで意識していませんでしたが、周囲から言われるうちに、
自分は色にこだわっているのだと認識するようになりました。
昔見た風景や、記憶の中の景色が、
知らないうちに色として作品に反映されているのだと思います。

—— 海外での生活は、制作にどんな影響を与えましたか。
一番大きいのは、色の感覚だと思います。
建物や工業製品の色も、日本とはまったく違いますし、空や海の色、光の入り方も違う。
そうした環境の違いが、自分の中の色彩感覚を少しずつ変えていったのだと思います。

※釉薬研究のテストピース
—— 海外での陶芸の捉えられ方については。
海外では、アートとクラフトの線引きがとても明確です。
「この作品はどちらですか?」と聞かれたこともあります。
私にとっては、その質問自体が少し意外でした。
私はそういった線引きを意識したことがなかったのですが、
海外の方にとっては一つの重要な要素になるようです。
後編は明日公開されます。