【陶芸家:岩崎龍二インタビュー後編】器は使えるアート

【陶芸家:岩崎龍二インタビュー後編】器は使えるアート

—今の作風にたどり着くまでの転機を教えてください。

白い釉薬に出会ったことですね。

白の上にはどんな色でも乗せられる、そこに気づいたのが大きな転機でした。

例えば白い釉薬の上に鉄分や灰を吹きかけると、かけた物によって全く違う表情を見せてくれる。

その自由さが面白くて、のめり込みました。

※製作に使われる灰

—工房もとても美しい空間ですね。

幼馴染の建築家に設計をお願いしました。

彼は僕の作品をよく理解してくれていて、“作品が自然に呼吸できる場所”というテーマで空間をつくってくれたんです。

一番のお気に入りは、轆轤の前の窓。

あそこから見える景色にいつも癒されています。

※轆轤の前から見える景色

—ご自身の創作の特徴はどんなところにあると思いますか?

好き勝手にやっていることじゃないですかね(笑)

“こうあるべき”みたいな固定観念はあまり意識していません。

とりあえず、焼いてみてどうなるかを考える方が楽しいんです。

本などで後から『ああ、これはこういう現象だったのか』と気づくことも多いです。

でも、自分の経験として身体で理解した方が、納得感があるんですよ。

そういう積み重ねが、今の創作につながっている気がします。

※大胆に削りを入れる様子

—創作の中で苦しかったことはありますか?

釉薬の実験ですね。

上手くいかないと本当に心が折れそうになります。

でも、“とりあえず次へ”という気持ちで切り替えるんです。

忘れて、また次へ。

そうやって続けてきた感じですね。

 

—逆に、喜びを感じる瞬間は?

やっぱり使ってもらうことです。

誰かの暮らしの中で、自分の器が息づいている。

それを想像するだけでうれしい。

器を通して、作り手と使い手のコミュニケーションが成立しているような気がします。

※轆轤で成形した後、乾燥させる工程

—若い世代の陶芸家に伝えたいことはありますか?

今は情報が多い時代ですよね。

調べればいろんな情報が出てきます。

これにはやっぱり良し悪しがあると思います。

いろんな情報に惑わされてしまうとも思うのです。

なので、大事にしてほしいのは自分の“好奇心”に素直であることです。

好きなことに素直であってほしいし、突き詰めていってほしいです。

迷っても、続けることで必ず見えてくるものがあります。

 

—今後、挑戦したいことは?

僕は“器は使えるアート”だと思っています。

言葉が通じなくても、器を通して語り合うことはできる。

だから、世界中の人に僕の器を使ってもらいたいですね。

どんな国の食卓にも、自然に馴染むような器を作り続けたいです。

※アトリエの一角

—最後に、岩崎さんが大事にされている“創作”という言葉についてお聞かせください。

手で作っていますから、同じ形を作ってもまったく同じにはならないわけです。

雰囲気は統一していますが、その時々の想いが器に乗っていたほうがいいと思っています。

だから“狙い過ぎず、作りに行き過ぎない”ことを心がけているんです。

一点一点の形を大切に、土の伸び方や釉薬の流れをそのまま生かしたい。

轆轤のダイナミズムや創作時のライブ感を残す。

それが僕の創作です。

土と語らい、その対話の中から器が生まれていく。

 岩崎龍二さんの作品には、偶然と必然が溶け合ったような熱が宿っています。 

それは、日々の暮らしの中に“美しさ”を見つけ続ける、彼自身の姿そのものなのかもしれません。

 

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