【陶芸家:岩崎龍二】光と白のあいだで

【陶芸家:岩崎龍二】光と白のあいだで

大阪の南、静かな住宅街の一角に、岩崎龍二さんの自宅兼アトリエはあります。

木をふんだんに使った壁面には、これまでに生み出された器たちが整然と並び、その光景はまるで小さな美術館のようです。

外光をやわらかく受け止める白い器が、穏やかな空気の中に息づいています。

岩崎さんの作品には、凛とした静けさと、人の温もりが同居しています。

それは、計算ではなく“ひらめき”から生まれる、偶然の美しさ。

焼きの中で現れる思いがけない色、釉薬が見せる揺らぎ―― その一瞬の変化にこそ、彼の美が宿っています。

白という色は、彼にとって無限の可能性を秘めた始まりの色です。

「白の上にはどんな色も乗せられる」と気づいた瞬間から、表現の幅は大きく広がったとそうです。

釉薬を吹きかけ、焼き、また試す。 偶然と必然のあわいを往復しながら、自らの感覚を研ぎ澄ませていく。

その探求は、まるで音楽家が音を探るような繊細さに満ちています。

制作を支える工房は、生まれ育ったご実家を、友人の建築家の協力を得て改装されました。

轆轤の前に広がる大きな窓からは、四季折々の緑が見えます。

春の芽吹き、夏の光、秋の実り、冬の静寂。

その移ろいが、器の穏やかな色合いを育てているようです。

岩崎さんの創作は、自由と好奇心で溢れています。

「これとこれをかけ合わせたらどうなるのか」

その問いの積み重ねが、新しい表情を生み出す。

果物の形や色、自然の中に潜む不均衡の美しさ、それらから彼はインスピレーションを受けているのです。

色も形も、狙い過ぎない。 その“あわい”の中にこそ、生命のような伸びやかさが宿るのでしょう。

知識よりも体験を信じる―― 本で知るよりも、自らの手で確かめ、その結果を受け止める。

その積み重ねが、作品に確かな深みを与えています。

情報が溢れる時代にあっても、迷わず、自分の“好き”を信じて続けること。

その純粋な情熱が、器の中に確かな熱として宿っているのです。

信じた道を淡々と歩むことで、いつの間にか自身の居場所が生まれていく。

轆轤の音、窯の熱、そして窓から差し込む光。

そのすべてが、彼の手を通して器に宿っていきます。

狙わず、飾らず、ただ誠実に。

岩崎龍二さんの白い器は、今日もまた新しい景色を映しています。

 

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