【陶芸家:榎並伸太郎インタビュー後編】暮らしに還る器
Share
――工房に置かれている制作メモには、設計図のようなものはありますが、よく書かれるのですか?
そうですね。作りたいモノのイメージは日々温めて、設計図に起こしています。
何も考えずに轆轤に向かうこともありますが、ほんとにたまにです(笑)。
あらかじめ作るものを決めておくことで、制作の最中も迷いが少なくなります。
手を止めずに済む、という感覚に近いかもしれません。

――白やベージュを基調とした色合いが印象的ですが、どうしてこの色に行き着いたのですか?
僕は文系で釉薬の調合とかはあまり得意ではなくて。
なので、とにかく数を試します。
たくさん調合して、テストで焼いてみて理想の色を探しています。
今の白とベージュは、自分の模様に一番合うと直感的に思えた色です。
将来的には、他の色にも挑戦したいですね。

――創作のアイデアは、どんな瞬間に浮かびますか。
轆轤の前にいない時が多いですね。
歯磨きをしている時とか、料理をしている時とかって、頭を考えていなくても体が勝手に動いているような瞬間ですよね。
そういった時にアイデアが生まれることが多いです。
器のアイデアだけじゃなくて、言語化出来なかった考えや思いが急に言語化出来たりすることもあります。
そういう時は急いでメモるようにしてます。

――転機となった作品はありますか。
リム皿ですね。
シンプルな分、個性を出すのが難しい器ですが、自分の模様を一番きれいに見せられる形に落とし込めたと思っています。
陰影を意識したデザインで、1番気に入ってる作品ですし、家で1番出番が多いうつわです。
このお皿から、僕の作品が出来始めました。

――作るうえでの喜びは?
新しいものを作って、実際に使ってみる瞬間ですね。
「これ、いいやん」と思えた時は本当に嬉しい。
茶漉し付きのマグが完成した時は特に印象に残っています。
没になった作品も、とりあえず使い続けてみると、改善点が見えてきたり、意外と悪くないと思えたりします。

――逆に、難しさを感じる点は?
釉薬ですね。
テストピースでは良くても、実際のサイズで焼くと印象が変わる。
毎回難しいなと思います。
――独立されて、変化はありましたか。
独立したばかりで自身の仕事のキャパシティが分からず、いっぱいいっぱいになった時期もありました(笑)。
でも、家族との時間が増えたのは本当に良かったです。
子どもの成長を見ながら仕事ができる今の環境は、すごく気に入っています。

――最後に、陶芸を志す方へメッセージを。
あまり「良いものを作らなきゃ」と思いすぎなくていいと思います。
まずは自分が使いたいものを作って、使ってみること。
共感してくれる人は、きっといますから。
あとは、外に出ていろんな刺激を受けることですね。
轆轤の前で陶芸のことばかりに向き合っていると、頭でっかちになってしまうと思うのです。
様々なカルチャーからいろんな価値観を得ることは、遠回りに見えてすごく制作に良い影響を与えてくれると思います。

榎並さんの言葉には、終始「暮らし」という軸がありました。
特別であろうとせず、自分と家族が心地よく使えるものを作る。
日々の生活から生まれる器は、使う人を自然と榎並さんの生活の中へと招いてくれます。